UCIレースとなった東北CX猪苗代湖 絶好調の小坂光が砂地獄を制し5連勝をマーク
TOHOKU CX Project 2015 第2戦 UCI-Class2 猪苗代ラウンド 2015.10.31-11.1 福島県猪苗代町・猪苗代湖天神浜
2015.11.03
10月31・11月1日の2日間、東北シクロクロス第2戦が猪苗代湖天神浜で開催された。エリートのレースはUCI2クラスに昇格し、世界選代表選手選考レースにもなる。今シーズン無敵の強さをみせるブリッツェンの小坂光が5連勝をマークした。
磐梯山を望む福島県・猪苗代湖天神浜で開催された東北シクロクロス2015第2戦。AJOCC公認のJCXシリーズであり、日曜の男女EliteはUCI2クラスの国際大会となっての開催だ。従来より開催されてきた猪苗代湖天神浜ラウンドだが、コースも国際基準のものに変更され、日本全国から選手たちを迎えた。
紅葉の進む東北はすでに晩秋。猪苗代湖の対岸にそびえる名峰・磐梯山は山頂部にうっすらと雪化粧もして、吹きすさぶ風の冷たさが冬の足音を感じさせる。土曜はカテゴリー2・3・4、L2、マスターズなど一般レースが開催。朝方まで前夜の雨の影響が残ることが心配されたが、レースが始まる頃には路面も乾き、好コンディションに。
また日曜はキッズに加えてシングルスピードの部も用意され、2日間のレースを楽しませる工夫があった。
メインレースのUCIレース、男女エリートは日曜の午後の開催。空は青く晴れ渡るものの、湖からの風が冷たく、気温の上がらない中でレースはスタートする。
ここ天神浜のレースと言えば砂場セクションが有名。湖岸の波打ち際すれすれの砂浜がコースに取り入れられ、湖に近い松林の小路も砂の深いふかふかサンドセクションの攻略がキモと言われる難コースだ。お台場でのシクロクロス東京、あるいは関西クロス・マイアミ浜同様、砂セクションをいかに乗って行くかが勝負を左右し、そのテクニック以上にパワー系ライダーに有利なコースとも言える。
UCIポイントとと高額賞金の用意されたUCIレースは、女子エリートが14人、男子エリートが37人のエントリーだ。豊岡英子、竹之内悠の男女日本チャンピオン不在なれど、それ以外は有力どころがほぼ顔を揃える豪華ロースターに。
男子はスタート直後から好調の小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)がホールショットを奪い先行。前田公平(弱虫ペダルシクロクロスチーム)がぴったりとマーク。少し間を置いて中原義貴(同)、小坂正則(スワコレーシング)、濱 由嵩(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM )、丸山厚(BOMAレーシング)、合田正之(cycleclub3up)と続く。
早くも小坂と前田のランデブーが形成されようかという1周め後半、深い砂セクションを乗ったっままクリアしようとした小坂がミスによりストップ。そこに前田のバイクが突っ込んだ。ほどなくして走りだした2人だが、5人ほどにパスされて後退。前田は腕を抑えて痛がるしぐさをみせる。
小坂は快調に前を追い、2周めには挽回してトップに返り咲く。濱が後方に着こうとするが、テクニックとパワーともに小坂が一枚上だ。小坂が快調に走る一方、スローダウンした前田はバイクを降りた。小坂と絡んだ時にぶつけた腕が動かないと言う。優勝候補のリタイアだ。
小坂以降の上位争いは熱を帯びる。力強いランで順位を上げたのは小坂光の父、正則。砂場に手を焼く丸山厚をパスし、2位へとポジションを上げた。小坂光、父・正則、丸山と、スワコレーシング出身者による3人が上位を占める。そして光と1963年生まれ・52歳の父・正則の「小坂親子ワン・ツー」が期待できると、会場のCXマニアたちの胸は熱くなった。
小坂光は最後まで危なげなく逃げ切り、優勝。宇都宮シクロクロスのエキシビジョンから数えると実に5連勝となる絶好調ぶりを発揮した。前田を気遣ってか控えめなポーズでゴールした小坂。楽勝に見えたが、ロードとの連戦で蓄積した疲労を引きずっており、決して容易な勝利ではなかったと言う。「もし前田と最後まで競っていれば、勝負の行方は分からなかっただろう」と話す。小坂は砂場で思ったほどは差がつかないと判断し、松林セクションを重視したオールラウンドタイヤをセレクトして走ったという。
フィニッシュしてすぐに大分クリテリウムでブリッツェンの青柳、大久保コンビがワンツー勝利を挙げたことを聞くと、「3人は同級生なんですよ。今日はブリッツェン・ディですね!」と喜んだ。
小坂正則が制すると思われた2位争いは、最後にどんでん返しが待っていた。最終コーナーで小坂が転倒。小坂に苦しめられ、離されていた丸山は楽々パスし、いとも簡単に2位の座を手にした。
ゴールするやいなやハンドルバーを叩き、悔しさを爆発させる小坂・父。「今日は親子で祝杯だ、と心のなかで思っていたら、最終コーナーのえぐれた砂の奥に木の根っ子が隠れていた」と苦笑い。2位と3位ではUCIポイントも賞金額も大きく違うのだ。
女子は台湾KOMヒルクライム帰りの與那嶺恵理が圧勝
UCI女子エリートは14人でのレース。1周目にリードしたのは今井美穂(cycleclub.jp)、武田和佳(Liv)、宮内佐季子(Club La.sista)、與那嶺恵理(サクソバンクFX証券YONEX)の4人。2周めにトップに立ったのは、台湾で金曜日に太魯閣KOMチャレンジのレースを走って帰国したばかりの與那嶺。
台湾では標高3275mを登る超級ヒルクライムで優勝したとは思えない(あるいはその勢いそのまま?)パワーを見せつけて、2位宮内との差を広げ、勝利した。
「シクロクロスは楽しみながら参戦する」と言う與那嶺。賞品の猪苗代地ビールの詰め合わせセットに大喜びだ。
各クラスの入賞選手たちにも地元からお米や特産品が贈られ、素晴らしい雰囲気で幕を閉じた。「東北から元気を!!」をキャッチフレーズに開催されている東北CX。CX不毛の地・東北と言われてきたエリアだが、このシリーズ戦は内容の良さで人気が高まりつつある。UCIの国際大会としても誇れる内容とクオリティのレースだった。
photo&text:Makoto.AYANO
special thanks : Kasukabe Vision FILMz, Hiro
RESULT
エリート男子 12周回
- 小坂 光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)1:07:46
- 丸山 厚(BOMA RACING)+0:20
- 小坂 正則(スワコレーシングチーム)+0:22
- 濱 由嵩(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM)+0:52
- 武井 亨介(FORZA・YONEX)+2:30
- 中原 義貴(弱虫ペダルシクロクロスチーム)+2:58
- 兼子 博昭(スワコレーシングチーム)+3:13
- 合田 正之(Cycle club 3UP)+3:21
- 國井 敏夫(MilePost BMC Racing)+3:42
- 中間 森太郎(FRIETEN)+4:09
エリート女子 6周回
- 與那嶺 恵理(サクソバンクFX証券・YONEX)0:40:02
- 宮内 佐季子(Club La.sista Offroad Team)+0:29
- 武田 和佳(Liv)+0:39
- 今井 美穂(CycleClub.jp)+3:15
- 川﨑 路子(PAXPROJECT)+5:24
- 上田 順子(ダム部)+5:44
- 須藤 むつみ(Ready Go JAPAN)+6:21
- 橋口 陽子(TEAM 轍屋)+9:01
- 吉岡 梨紗(Ready Go JAPAN)-1Lap
- 安田 朋子(SNEL)-1Lap